『北陸地区紹介』
大嶋 重徳(北陸地区主事)

 北陸。それは西田幾多郎、鈴木大拙を生み出し、育てた土地である。西田幾多郎は、石川県で生まれ、この地で人間存在を問いながら成長した。鈴木大拙はこの地から世界に仏教哲学の存在を知らしめた。彼らを輩出したこの地は自分の存在の罪深さに孤高に立ち向かう求道者親鸞が訪れ、生きた場所である。またその親鸞の教えを人々の中で根付かせることを願って生涯をささげた蓮如も生きた。彼の功績は偉大だ。浄土真宗をこの地に完全に土着化させた。男女を等しく扱うこの教えに生きた民衆は一向一揆となり、権力に立ち向かう力も生み出した。北陸には心の奥底に熱く流れる宗教心と、決して表に見えることのない闘争心が精神土壌の奥深くに存在する。

 日本国中が考えることを止めた時代に、北陸に考えることを止めない文化が確かに存在する。北陸の若者はフィーリングだけで判断することに懐疑的である。全国一婚前のセックスに疑問を持ち、見た目で異性を判断しない。

 彼らは考えている。自らを深く問いながら、深く閉ざされた雪のような応えのない世界に入り込んでいく。そしてその雪は深く、簡単に心の奥深くの存在する暗い根雪を他人に見せようとはしない。

 キリスト者学生はどうだろうか。1970年代に金沢大を中心としてKGK運動に連なる学生達の群れが起こされた。彼らの心に燃え盛ったキリストへの情熱は、自らの学友の心を溶かした。どこかの偉い伝道者の指導がもたらしたのではない。学内に派遣されたことを受け取り、拙い言葉でもそれを用いる聖霊の働きによって救いが北陸に於ける学生世界にももたらされていったのである。その後、金沢大から飛び火し石川県内を超え、福井、富山にもKGK運動は展開されていった。そして1996年に在住主事が教会と卒業生の祈りの中で与えられ、2001年春には学生達自らの手で総会を開き、地区成立を為した。生まれたばかりの地区ではあるが、ここには多くの卒業生の祈りと伝道の延長線がある。

 この地には日本の多くの地域で失いつつある「自分を問う文化」が未だ存在する。これがキリスト学生を用いられる主の業によって、「神を問う文化」となることを切に願う。私は北陸の地に来て、学生達が神を問う為には、先ず「祈り」の伝統を築かねばならないと確信している。日々、祈りの中で神に問い続け、聖書を通して神を知る。祈りを抜きにした聖書研究は、再び深い根雪の中に学生達を誘うであろう。

 私は主事としてここで「祈りの日々」を学生達とつくりあげたい。そのことこそが北陸KGKの使命であり、北陸という土地で神と教会に仕える学生が育つことのできる唯一無二の神の方法であるからだ。


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